P2-5 静岡県第4次地震被害想定が発表されました 発表された被害想定と、今後取り組むべき 対策の一部を紹介します 問 防災課防災対策係 TEL44-3108   防災課防災計画係 TEL44-3360  6月27日、静岡県第4次地震被害想定の第1次報告が発表されました。  この想定は、東日本大震災を教訓に、現時点の科学的知見に基づき、あらゆる可能性を考慮した最大級の巨大地震を想定したものであるため、地震・津波被害ともに、これまでの想定をはるかに上回る数値が発表されています。  本特集では、今回発表された第4次地震被害想定と今後取り組むべき対策の一部を紹介します。  発表された数値の大小だけにとらわれるのではなく、想定から自分たちの地域の災害特性を知り、被害を軽減するために、これから自分たちが何をすべきか、あらためて考えてみましょう。 ◎「南海トラフ巨大地震」とは?  「南海トラフ」は、静岡県の沿岸から九州の日向灘に延びる海底の溝です。  これまでは、東海・東南海・南海の各地域で個別に地震が発生していますが、「南海トラフ巨大地震」は、その一帯が同時に動くことを想定したものです。 ◎第4次地震被害想定における 2つのレベルの地震と津波  第4次地震被害想定では、過去数百年間に経験してきた地震・津波を基本とした想定(レベル1)と、東日本大震災を教訓に、あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震・津波の想定(レベル2)の2つの想定が発表されています(表@)。 ◎袋井市の被害想定  県では、地震の震源や発生時間帯など様々なケースにおける被害想定を発表しています。表A・表Bは、その中でも被害想定が最大となるケースの数値をまとめたものです。  袋井市の被害想定は、最大震度7の区域が市全域面積の86.1%、最大津波高が10m、人的被害(死者数)が約600人、建物被害(家屋全壊・焼失棟数)が約15,000棟となっています。 【表@】 2つのレベルと被害想定 区分 対象とする地震・津波 内容 レベル1 東海地震 東海・東南海地震 東海・東南海・南海地震 発生する頻度が比較的高く(100〜150年に1度程度)、発生すれば大きな被害をもたらす地震・津波 レベル2 南海トラフ巨大地震 発生する頻度は極めて低いが、発生すれば甚大な被害をもたらす、あらゆる可能性を考慮した最大クラスの地震・津波 【表A】 想定される震度・津波高など 想定区分 レベル1 レベル2 震度区分 (面積率) 震度7 61.5% 86.1% 震度6強 38.5% 13.8% 最大津波高 5m 10m 津波浸水面積 0.3平方キロメートル 2.5平方キロメートル (※)小数点以下第2位を四捨五入しているため、   必ずしも100%になりません。 【表B】 想定される人的被害と建物被害 要因 人的被害(死者数) 袋井市 静岡県合計 建物倒壊など 約 600人 約 7,800人 火災 約 70人 約 3,300人 山・崖崩れ − 約 200人 津波 約 10人 約 96,000人 そのほか − 約 20人 合計(※) 約 600人 約 105,000人 要因 建物被害(全壊・焼失棟数) 袋井市 静岡県合計 揺れ 約 12,000棟 約 191,000棟 人工造成地 約 1,900棟 約 17,000棟 火災 約 800棟 約 66,000棟 液状化 約 40棟 約 1,800棟 山・崖崩れ 約 30棟 約 2,700棟 津波 − 約 28,000棟 合計(※) 約 15,000棟 約 304,000棟 (※)被害想定の数値は、ある程度の幅を持って見る必要があります。   また、各要因ごとに四捨五入しているため、合計は合いません。 静岡県第4次地震被害想定における袋井市の被害想定の概要と静岡県第3次地震被害想定(平成13年5月発表)との比較  今回発表された第4次地震被害想定と、平成13年5月に発表された第3次地震被害想定では、次の1〜4のとおり被害の想定が大きく変わっています。  ここでは、レベル1とレベル2の各ケースにおいて被害が最大となるケースをまとめました。 1 震度分布  地震動は、第3次地震被害想定に比べて、震度6弱の範囲がなくなり、震度6強から7のみとなっています。  レベル1の地震は、震度7の範囲が27.9平方キロメートル(約26%)から65.8平方キロメートル(約62%)に広がっています。  レベル2の地震は、震度7の範囲が92.2平方キロメートル(約86%)と大幅に広がっています。 2 建物被害(全壊・焼失棟数、半壊棟数)  レベル1の地震・津波による建物被害(全壊棟数)は、第3次地震被害想定(大破棟数)と被害区分が異なるため、単純な比較はできませんが、第3次地震被害想定の6,842棟に比べ、約13,000棟と大幅に増えています。また、半壊棟数も約9,300棟と大きな被害が予測されています。  レベル2の地震・津波による建物被害(全壊・焼失棟数)は、レベル1の約13,000棟に比べ、約15,000棟と約2,000棟増えています。また、半壊棟数も約9,600棟と大きな建物被害が予測されています。 (※増加の主な要因は、地震動による被害増です) 3 人的被害(死者数)  レベル1の地震・津波による人的被害(死者数)は、第3次地震被害想定の223人に比べ、約400人と1.79倍となっています。主な要因は建物倒壊による被害で、津波による被害は想定されていません。  レベル2の地震・津波による人的被害(死者数)は、レベル1の約400人に比べ、約600人と1.5倍となっています。主な要因は、建物被害によるもので、津波による被害は自力脱出困難者約10人が予測されています。 4 最大ケースの津波浸水域  レベル1の津波高は最大5mとなり、第3次地震被害想定の5.3mとほぼ同様の高さとなっています。浸水域全体の面積は、第3次地震被害想定の0.24平方キロメートルに比べ0.3平方キロメートルと若干増えています。  レベル2の津波高は、最大で10mとなり、浸水面積も最大2.5平方キロメートルと、レベル1の津波に比べ8倍以上になっています。 ◇被害想定の数値のほとんどが大きく増加していますが、やるべき対策が大きく変わるわけではありません。数値の大きさに戸惑うのではなく、これまでの対策を確実に実施することが重要です。 静岡県第4次地震被害想定における津波浸水域 ◎県が実施した津波シミュレーションの前提条件…河川堤防は地震発生と同時に地震発生前の堤防高から75%沈下し、海岸防災林は地震では壊れないこととする。 ◎結果…最大10mの津波は海岸防災林でほとんど防がれ、海岸部正面からの浸水は非常に少ない。太田川・弁財天川からの津波浸入により、河川沿いに浸水区域が広がる。 震度と揺れなどの状況(概要) 【震度6強】 ◎はわないと動くことができない、飛ばされることもある。 ◎固定していない家具のほとんどが移動し、倒れるものが多くなる。 ◎耐震性の低い木造建物は、傾くものや、倒れるものが多くなる。 ◎大きな地割れが生じたり、大規模な地すべりや山体の崩壊が発生することがある。 【震度7】 ◎耐震性の低い木造建物は、傾くものや、倒れるものがさらに多くなる。 ◎耐震性の高い木造建物でも、まれに傾くことがある。 ◎耐震性の低い鉄筋コンクリート造の建物では、倒れるものが多くなる。 被害を軽減するために取り組むべきこと ◇第4次地震被害想定の発表では、各被害の想定と合わせて、各種地震対策の実施や強化により被害が大幅に軽減されることも示されています。対策と言っても、これまでに取り組んできたことや考えられてきたことが大きく変わるわけではありません。1人ひとりが確実にこれまでの対策を実施することが、自分の身を守るだけでなく、地域全体の被害の軽減につながります。 住宅耐震化の推進 1 わが家の専門家診断(無料) ◇予想される東海地震などで、住宅などの倒壊から1人でも多くの皆さんの命を守るため、市から専門家を派遣し、耐震診断や相談を無料で行っています。 ◇市では、阪神・淡路大震災の経験から、倒壊の恐れが高い昭和56年5月以前に建てられた木造住宅を中心に耐震化を推進していますが、さらに、本年度から、平成12年5月以前に建てられた木造住宅まで、無料診断の対象を拡大しました。 ◇対象となる方は、この機会に診断を受けてみませんか。 2 「耐震補強工事」の実施 ◇耐震診断を受け、耐震性に不安がある方は、耐震補強を行いましょう。 ◇市では、昭和56年5月以前に建てられた木造住宅で、耐震補強計画に基づき一定の基準を満たす補強工事に対して、次の補助を行っています。 補助額 一般世帯900,000円(限度額) ※65歳以上のみ世帯や障害がある方がいる世帯などは、1,100,000円(限度額) 問 申 建築住宅課建築指導係 TEL44-3123 家庭内家具転倒防止の推進 1 家具等転倒防止器具の現物給付制度 ◇市では、平成24年度から、「家具等転倒防止器具の現物給付制度」を実施しています。家具等転倒防止器具の設置は、簡単にできる地震対策ですが被害の軽減効果が大きく、費用も少額です(この現物給付制度を利用すれば、ほとんど費用も掛かりません)。 給付対象者 袋井市の住民基本台帳に登録されている世帯で、かつ、居住している世帯 給付する転倒防止器具 市が指定する転倒防止器具の中から、10年度の間で1世帯につき6台分までの市指定の転倒防止器具を現物給付します。ただし、1台当たりの器具代として2,000円までを市が負担し、2,000円を超える分は申請者の負担となります。 2 家具等転倒防止器具の取付支援制度 ◇転倒防止器具の取り付けが困難な方は、市が委託する「袋井市地震と災害を考える大工の会」から専門家を派遣し、「取り付け支援」も行っています。お気軽にご相談ください。 問 申 防災課防災対策係 TEL44-3108 これだけは備えておこう!!「食料・飲料水・非常持出品の準備」 ◇南海トラフ巨大地震では、地震・津波により超広域にわたる被害が発生することを想定しています。超広域災害が発生した場合には、水道・電気・ガスなどのライフラインの遮断や発災直後における行政支援の困難性、また近隣県自体が被災するといった最悪な状況になることが十分に考えられます。当然、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの機能も停止します。 ◇当面の間、個人個人が、自活して生活することができる食料・飲料水・非常持出品の準備を整えておきましょう。 避難時の非常持ち出し、ここがポイント! ◎食料や飲料水は、1週間分の準備をしましょう。持ち出せる形(調理不要の形)で3日分、その後に取りに戻る分として最低4日分を備蓄しておきましょう。 ◎家族に赤ちゃんや介護が必要な方がいる場合など、自分の家族に必要なものを考えて準備しておきましょう。 4人家族の場合、どれくらいの備蓄が必要なの? ◎「7日分の水」は、3リットル/1人分×7日×4人=84リットルで、重さは84kgになります。 ◎食料は、じっとしている場合でも、成人1人1日当り1,200キロカロリーが必要とされています。カンパン100g(缶入り1個)で約400キロカロリーですので、これで1食分。7日分の食料をカンパンだけでまかなう場合でも、100g/1食×3回×7日×4人=8.4kgが必要になります。 今一度、家族にとって必要なものを考え、備蓄の方法や量など、 様々な観点から備えておきましょう。 袋井市独自の津波シミュレーション分析結果について 問 防災課防災対策係 TEL44-3108   防災課防災計画係 TEL44-3360 ◎「市独自の津波 シミュレーション」の考え方は?  南海トラフ巨大地震発生時の津波が、どのような規模・被害をもたらすのかといった津波シミュレーションは、国や県でも実施しています。  国や県の津波シミュレーションは、「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの津波」を想定したもので、発生する頻度は極めて低いものですが、市独自の津波シミュレーションは、さらに、海岸防災林や河川の堤防が地震発生と同時にすべて破壊されるという非常に厳しい条件を想定したものです。 ◎国・県・市の津波シミュレーションの分析結果からわかった「東日本大震災」と「南海トラフ巨大地震被害想定」の違いは?  津波シミュレーションの分析を進めてきた結果、東日本大震災と南海トラフ巨大地震被害想定の海側の震源の位置の違いが明確になってきました。  南海トラフ巨大地震被害想定では、袋井市に最も影響を与える震源は、陸側に非常に近いところに位置しています。  津波は、海底の地形の動きやズレによって引き起こされますが、海から陸までの距離が短いということは、「津波の周期」や波の長さが短くなり、エネルギーも小さくなることを意味します。  したがって、南海トラフ巨大地震被害想定における袋井市沿岸部の津波は、東日本大震災と比べると波長が短く、エネルギーが小さいため、浸水区域も狭くなるという結果が出ています。 東日本大震災と南海トラフ巨大地震の津波周期比較 東日本大震災(仙台平野) 南海トラフ巨大地震 津波の高さ 最大で10〜12m 最大で9〜10m 津波の周期 20〜30分 5〜15分 ◇津波の周期…水面が1回上下する時間のこと。周期が長ければ長いほど、基本的に波の長さが長くなり、津波のエネルギーが大きくなり、浸水区域が広がります。 袋井市津波シミュレーションにおける最大浸水想定区域図 〜最悪の条件下で砂丘・河川堤防が地震発生と同時に破壊された場合〜 国道150号付近の津波到達時間と浸水深 ◎津波到達時間…約30分 ◎浸水深…おおむね0.2〜1.0m