P20-21 市民編集員がお伝えします Citizens' Eye まずはだしから始めませんか。 平成25年12月、「和食」がユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録されました。和食には欠かせない「だし」にも関心が集まっています。和食の基本、だしの力を見直してみませんか?  皆さんは、だしをとったことはありますか?「面倒だから市販のだしの素で」という方も多いかもしれませんね。  だしをとることは「だしを引く」とも言い、うま味を引き出すという意味合いがあります。昆布、かつお節、シイタケなどのうま味と滋養を引き出すことで、すべての素材を味わい深いものにしていきます。  家庭料理にだし文化を根付かせるには、まずだしのおいしさを体験するのが一番。ちょっとひと手間かけてみませんか? だしの効用  食育にも「だし」は大きく関わっています。幼稚園で実施した食育クッキング。野菜ソムリエの資格を持つ上久保節代さんは、食生活推進協議会の一員として講師を務めました。  昆布だけでとっただしを味見して、反応の薄かった園児たち。次に昆布とかつお節でとっただしを味見して、味の違いに気付きます。 「だしの微妙な味わいに子どもたちは敏感に反応。『おいしくなった!』と、いい飲みっぷりを見せてくれました。味覚が形成される大切な時期にいることを実感させられます」と上久保さんは言います。  野菜ソムリエとは、野菜や果物の魅力を伝える専門家です。上久保さんは、その活動の中で楽しくだしの魅力も伝えたいと思い、だしの勉強もしています。 「きちんととっただしで調理すれば味と香りに深みがでます。余分な味付けをしなくて済むので、塩分や脂肪分を減らすことができ、健康にも良いと言われています」  上久保さんが冬になるとよく作る料理を教えてくれました。「昆布、干しシイタケ、豚のスペアリブ(または鶏の手羽元など骨付き肉)、ダイコンを鍋に入れて、水と酒と塩だけでことこと煮込みます。昆布のグルタミン酸、干しシイタケのグアニル酸、豚肉のイノシン酸が全部ダイコンに浸み込んで、本当においしく感じられますよ」  野菜はだしによってさらにおいしくなり、味わいが生まれるんですね。  基本のだしのとり方と一緒に、だしをとったあとのかつお節や昆布の活用レシピも掲載しました(左記)。ぜひ作ってみてくださいね。 基本のだしのとり方 材料 水 1リットル 昆布 約10g かつお節 20〜30g @水1リットルを鍋に入れ昆布を浸す。 A@を火にかけ、鍋の内側にふつふつと泡がついてきたら昆布を引き上げる。 B鍋のお湯をそのまま火にかけ、沸騰する手前でかつお節を加え、火を止める。 Cそのまま1分ほど浸し、ざるでこす。 とっても簡単なだしのとり方 @ボウルに昆布とかつお節を入れる。 A@に80℃のお湯を1リットル注ぎ入れ1分ほど浸しざるでこす。 だしを上手に活用するコツ だしをまとめてとる だしをまとめてとり、冷蔵または冷凍保存しておけばいつでも使えます。冷蔵の場合は2〜3日、冷凍の場合は1週間で使い切りましょう。 だしをとった後のかつお節や昆布は佃煮やふりかけに! 細かく刻み、炒り煮します。(調味料はしょう油:砂糖:みりん=2:1:1を目安にお好みで) 知ってる? 中部学校給食センターに聞く学校給食のだし  袋井市には、昨年9月にオープンした中部学校給食センターをはじめ袋井・浅羽の3つの給食センターがあります。市内の幼・小・中学校すべての給食およそ1万食が、各給食センターで作られています。  センターでは、和食の献立の際、ほとんどのだしを手作りしているそうです。献立を作っている栄養教諭の原田康子さんに聞きました。 Q なぜ、だしを手作りしているのですか? A 子どもたちにおいしく食べてもらうために、なるべく素材からの調理を心がけています。化学調味料を含まない、天然のうま味を自分の舌で覚えてもらいたいと思っています。 Q 給食にはどんなだしを使っていますか? A かつお節やさば節などで、厚削りのものを使い、1時間ほどじっくり煮出しています。シイタケの戻し汁や昆布のつけ汁なども利用しています。 Q だし汁から手作りするメリットは何ですか? A だしのうま味を生かすことで、調味料の量が少なくて済み、子どものときから「うす味」に慣れていくことで、高血圧などの生活習慣病予防につながっていくと考えています。また、市販のだしの素にはアレルギーに関する食品が含まれることもありますから、すべての子どもに安心して食べていただけるように、それらを除く手だてにもなります。 静岡の郷土料理「とろろ汁」 おうちのだしは何ですか?  とろろ汁とは、ジネンジョやツクネイモなどのヤマイモをおろし、みそ汁やすまし汁でのばした料理で、旧東海道丸子宿のものが有名です。  遠州地域でも昔から食べられているとろろ汁ですが、だしは各家庭によって様々。そこで、市民の皆さんにご家庭のだしを教えていただきました。 ・さばだしのみそ汁を作り、とろろに混ぜています。昔は焼津から行商が来て、サバを売っていました。(春岡) ・浜松市出身です。実家ではシイタケの戻し汁とみそで作っていました。 ・イワシの骨を取り除いて、イモと一緒にすりこみ、みそ汁で作ります。(浅羽) ・磐田市出身です。かつお節としょう油で作っています。 ・掛川市の祖母は、かきこ(いわし・さば節の削り粉)でだしをとり、みそ汁で作っていました。(堀越) きになるコトバ 遠州弁 参考「遠州の方言考」浅井昂著 いーっけ 「こんなにお年玉もらったに〜」 「イーッケね」 良かった。幸運だった。 市民編集員のひとこと 給食センターでだしを手作りしている話には驚きました。おいしさを大切にしてくれてうれしいですね。(小) 市販のだしを使うことが多いので、削り節からのだし作りに興味がわきました。(谷) 小関裕子、谷口史恵