P08-09 袋井らしい働き方を提案してまちを活性化 〜袋井の“場のチカラ”再発見〜 市では、地方創生の一環として、ICTを生かしたまちづくりを進めています。 雇用の創出や新産業の振興、さらには定住促進などにつなげていくために、市内の空き店舗を利用して企業のサテライトオフィス誘致のための社会実験を行いました。事業の経緯と実験から見えてきた今後の展望を紹介します。 問 ICT街づくり課情報政策係 TEL44-3106 柔軟な働き方を促進するサテライトオフィス  ここ数年でよく耳にする言葉の一つである「サテライトオフィス」。都市部などに本拠地を構える企業が、離れた場所に設置するオフィスのことで、英語で「衛星」を意味するサテライトの言葉どおり、中心となる本社の衛星のような存在であることから、このように名付けられたとされています。  ICT(情報通信技術)を活用することで、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方(テレワーク)の促進につながるため、ICT系ベンチャー企業などを中心に広がっています。 ◎進出する側のメリット ■災害に備えたリスク管理  一極集中型ではないので、自然災害に備えたリスク分散ができます。 ■賃貸コストの削減  都市部に比べて安価でオフィスを設けられます。 ■通勤の負担軽減  職場と住居が近いことで、満員電車や乗り継ぎなどの負担が減り、通勤時間の短縮が図れます。 ■リフレッシュできる環境  四季折々の自然があふれる地方では、いつでも手を伸ばせば届く距離にリフレッシュできる環境があります。 ◎受け入れる側のメリット ■空きスペースの活用  空き店舗や空き家などを活用することができます。 ■雇用創出・新産業の振興  都市部からオフィスが移転してくるため、これまで本市にはなかった新しい産業が市内に進出し、これにより雇用の創出が期待できます。 ■定住を促進  オフィスとともに、その社員が移転してくるため、働く若者の定住促進などにもつながります。  サテライトオフィスは、進出する企業側と受け入れる地元側の双方にとってメリットが多く、「働き方改革」の推進として政府も後押ししています。 袋井の“場のチカラ”を生かしたサテライトオフィス誘致  これらの点に着目し、市では、袋井らしい働き方を提案して、サテライトオフィスの誘致を進めていきます。  袋井市には、豊かな自然や情緒あふれる寺院など、都市部にはない独特の魅力が数多くあります。そうした地域の魅力を“場のチカラ”と呼び、「ICTを生かしたまちづくり」政策と合わせて、誘致のPR材料としていきます。 社会実験としてICT企業がオフィスを設置  サテライトオフィス誘致を実現していくために、10月12日から18日まで市内で導入の試行(社会実験)を実施しました。  社会実験に参加した(株)大和コンピューターは、大阪に本社を構えるソフトウェア開発などの企業で、2009年から市内大野に自社農園を設け、ICTを活用した施設園芸による農業生産を実施しています。  今回は、期間限定のサテライトオフィスを市内観光名所の一つである法多山尊永寺門前の空き店舗に設置し、社員研修を実施しました。 サテライトオフィス誘致でまちを活性化 ・雇用創出新産業の振興 ・ICTを生かしたまちづくり ・“場のチカラ” ・定住促進 ・空きスペースの活用 ◎サテライトオフィス社会実験(社員研修)スケジュール 12日(水)1日目、13日(木)2日目、14日(金)3日目〈ワーク(働き方)体験〉 ・門前事務所(サテライトオフィス)での朝礼 ・自社農園での農業体験研修 ・門前事務所(サテライトオフィス)での夕礼 ・市内若手経営者との交流会(異業種交流) 「都会から見た袋井」と「袋井から見た都会」の文化交流ができた。 【交流会に参加した市内経営者の声】 15日(土)4日目、16日(日)5日目〈ライフ(休み方)体験〉 ・市内散策 ・寺ジャズコンサート鑑賞 17日(月)6日目、18日(火)7日目〈ワーク(働き方)体験〉 ・門前事務所(サテライトオフィス)でアプリ開発研修  開発したアプリは、「袋井市防災アプリ」。市がオープンデータとして公開している各種防災データ(避難所、消火栓、防災倉庫など)をGoogleMap上に表示したものです。 ・境内ランチミーティング サテライトオフィス社会実験の概要 期間…平成28年10月12日〜18日(7日間) 場所…法多山尊永寺門前の空き店舗(袋井市豊沢・約75坪) 参加企業…株式会社大和コンピューター(本社:大阪府高槻市) 規模…新入社員、職場指導員など14人 内容…社員研修 ・オープンデータを活用した防災アプリ開発 ・ICTを活用した農業体験(自社農園にて) ・市内若手経営者との交流会 など (株)大和コンピューター社長 中村憲司さん 袋井市ならではの地域資源である豊かな自然や名刹・古刹、地域の方々との交流を研修に組み込むことができました。 そうした環境でソフトを作ると、同じモノを作っていても気持ちのこもったソフトが作れるのでは、と期待しています。 (株)大和コンピューター社員 山田紗矢香さん 鳥の鳴き声が聞こえる自然の中でのアプリ開発研修は、今までに味わったことのない体験で、リフレッシュすることができました。 通信回線が不安定になることがあったので、そうした点が改善されると、より快適な環境になると思います。 袋井らしいの働き方の効果  研修では、自社農園でのトマトやメロンの栽培実習などの農業体験のほか、アプリ開発に取り組みました。  また、法多山尊永寺境内でランチミーティングを実施したり、週末には境内でジャズコンサートを鑑賞したりして、袋井ならではの「自然豊かでゆったりとした」ライフスタイルを体験しました。  さらに、就業後には市観光協会会員である若手経営者との交流の機会を設けて、異業種間の意見交換も行いました。  サテライトオフィス誘致は、新しい出会いを生み出し、市内の事業者と誘致した企業の間に「気付き」を与える機会も提供します。 袋井モデルを全国モデルへ  今回の社会実験を通して、市は受け入れ側として経験を重ね、快適なWi-Fi環境整備の必要性など、課題を確認することができました。今後は、さらに課題分析を深めるとともに、企業のニーズに合った環境の提供を追求します。  人の温かさや豊かな自然といった袋井特有の“場のチカラ”を武器に全国の企業に発信することで、、袋井での働き方が全国のモデルになれるようにPRしていきます。  また、サテライトオフィス誘致を通して、ICT系ベンチャー企業などこれまで本市にはなかった新しい産業を振興することで、まちの活性化につなげていきます。