P06-11 守り、伝える 遠州三山の魅力に迫る  新年を迎え、今年1年の健康や家内安全を祈願するため、初詣に出かける人も多いのではないでしょうか。  私たちは、市内にある法多山尊永寺、萬松山可睡斎、医王山油山寺を称して、「遠州三山」と呼び、親しんできました。  また、遠州三山は、観光名所として全国から年間約230万人が訪れています。  この遠州三山をこよなく愛し、伝統や文化を次代に伝えようとする人たちがいます。  遠州三山の魅力と、それを伝える人々の思いを特集します。 問 産業政策課観光振興室 TEL44-3156   袋井市観光協会 TEL43-1006 伝統の舞を守り、伝える 法多山「田遊祭」 五穀豊穰を祈願する「田遊祭」  法多山尊永寺の「田遊祭」は、毎年1月7日に行われ、室町時代から法多地域に伝わる五穀豊穰を祈願するお祭りです。  当日は、正午から本堂を目指し、時代装束に身を包んだ村方衆と寺方衆が、杉並木の参道を進みます。午後0時30分から村方衆により本堂前の北谷寺(ほっこくじ)で奉納される七段の舞は、米作りの過程を七段構成の舞楽で表現したもので、国の記録選択無形民俗文化財となっています。  祭りの最後の放ち矢の神事の後には、福餅投げが行われとても賑わいます。  この行事の保存・継承に取り組む「法多山田遊保存会」の戸塚孝行さんに、お話を伺いました。 法多山田遊び保存会 副会長 戸塚孝行さん(法多) 法多山 田遊祭  1月7日(日)正午〜(行列出発…正午 田遊奉納…午後0時30分〜 餅撒き…午後2時30分頃〜) 問 法多山 尊永寺 TEL43-3601  当保存会は、法多地区の住民を中心に中学生1名、高校生2名を含む45名で構成し、田遊祭の保存・継承に努めています。  七段の舞は、古来、先輩から後輩へと受け継がれた舞です。1か月以上前から準備に入り本番に臨みます。  最近では継承を意識し、誰もがすべての役柄を舞うことができるよう、役柄をローテーションしています。私が初めて舞に出たのは中学1年生の時。あれから45年、年を重ねるごとに、この祭りを次代に繋ぎたいという気持ちが強くなっていきます。伝統芸能や文化の保存・継承について多くの団体が後継者不足に悩まされていますが、当保存会では、中・高生もいて、皆さん参加することに喜びを感じてくれています。ありがたいことです。  舞の見どころは、「牛ほめ」で見せる牛のユーモラスな動きと、「早乙女」の機敏な舞でしょうか。市民の皆さんも、今年1年を元気で無事に過ごすことができるよう、ぜひ田遊祭を見に来てください。 恒久平和に思いを馳せて 可睡斎「活人剣」 人を生かすための剣「活人剣」  萬松山可睡斎の山門の横には青銅色をしたモニュメント「活人剣(かつにんけん」がそそり立っています。この活人剣は、日清戦争(1894〜95年)の講和のため来日し負傷した清国全権大使「李鴻章」と、その主治医を務めた軍医総監「佐藤進」の交友の証です。碑の名の由来は、医師の佐藤が常に軍刀を身に着けている理由を尋ねた李に、「私の剣は人をあやめる剣ではなく、生(活)かすための活人剣」と答えたことにあります。1900(明治33)年、剣の部分は彫刻家「高村光雲」が手掛けました。しかし、第二次大戦中の金属供出で刀身部分がなくなり、台座だけが残っていたことから、可睡斎や市民団体が再建に取り組み、金属工芸家の宮田亮平さんが剣部分を制作。2015年、市民をはじめ多くの皆さんの寄附により活人剣は再建されました。その再建活動に関わった遠藤亮平さんにお話を伺いました。 可睡斎活人剣再建委員会 事務局長 遠藤亮平さん(下山梨)  活人剣は、日本の近代史を語る上で忘れてはならない日清戦争、そして日清両国の戦没者を弔い世界の平和を願うモニュメントです。戦火を交えたとしても、互いに認め合い尊敬し合うことができる人と人との交わりを後世に受け継ぐため、再建しました。私たちは、活人剣のことを多くの皆さんに知ってもらうため、講演会やパンフレットなどで広く紹介しています。  またこれから世界を舞台に活躍する子どもたちに、活人剣に秘められた史実を知ってもらうため、紙芝居や絵本を制作し、市内の小中学校などに届けました。絵本は市立の図書館でぜひご覧ください。市民の皆さんには、ときには活人剣を訪れて、当時をしのぶとともに自らの過去を振り返り、未来に思いを馳せてください。活人剣を語り継いでいきましょう。 油山寺ゆかりの 「川村驥山」を顕彰し、まちを育む  日本書道界の第1人者「川村 驥山」  日本書道界の第1人者である書家「川村 驥山」(1882〜1969)は、市内村松に生まれ15歳までを油山寺山内で過ごしました。5歳の時の書「大丈夫」は、子どもとは思えぬ大胆な筆遣いで既に書家としての頭角を表しています。幼いころから書と漢詩を学び、11歳のころには、明治天皇の銀婚式に「孝経」と「出師表」を献上し、天覧の栄とお褒めの言葉を賜るほどの腕前で、若いころは、全国各地を一本立ちの書家として、武者修行する文人墨客的な生活を送り、明治から昭和期の日本書道界の第1人者として活躍しました。この郷土の偉人を顕彰し、油山寺周辺の歴史や文化を研究、継承に取り組む「鳴沢の会」の兼子春治さんにお話を伺いました。 鳴沢の会 会長 兼子春治さん(村松)  市内村松の地域づくりグループ「鳴沢の会」は、昭和62年の結成以来、油山寺をはじめ様々な地域資源の掘り起こしや活用によって、地域住民が改めて「村松」の良さを知り、地域愛を深めることを目的に活動しています。  こうした中、袋井の偉人「川村驥山」を顕彰し、その功績を広く市民の皆さんに知っていただくため、驥山展の開催やパンフレット・図書の発行、袋井商工会議所と連携した清酒「驥山」づくりなどを行ってきました。このほか、油山寺道標調査と整備修理・道標展の開催、油山寺境内への踏み竹の道づくり、世界一大念珠祭などにも取り組んで来ました。こうした活動を通じて地元の結束力は高まり、また実績が認められ静岡県地域文化活動奨励賞なども受賞することができました。  袋井市には全国発信できる地域資源が沢山あります。全国の皆さんに袋井の良さを伝え、お見えいただくためには、地域資源を生かしたシティプロモーションが大切ですね。 ふくろい市民の心 遠州三山を感じて 袋井市観光協会会長 谷 敦さん  私は、何度も遠州三山を訪れていますが、今でも山門をくぐると清らかな空気を感じ、背筋が伸びる気がします。このことは三山とともに暮らしてきた我がまち固有の文化であると思います。  遠州三山には、四季を通じた様々な魅力があります。正月3が日は、全国から多くのお客様がお見えになります。  また、これからの季節は、法多山では1月7日の「田遊祭」や2月3日の「節分祭」が、可睡斎では元旦から4月3日まで「ひなまつり」や「室内ぼたん園」を開催、油山寺では5月5日、新茶シーズン到来を告げる茶祖「栄西禅師献茶式」が行われ、賑わいます。当協会では、こうした機会を通じ全国から袋井市への誘客を図り、まちの活性化に繋げるよう観光振興に取り組んでいます。  市民の皆さんも、ぜひ、遠州三山にお出かけいただき、魅力を感じてください。 問 袋井市観光協会 TEL43-1006 和の心をもって遠州三山を巡る 着物で巡る遠州三山  今回、様々な国の皆さんに、着物で遠州三山を巡ってもらいました。  ブラジル出身のナカムラ・アンドレイアさんと、インド出身のナラヤン・プラケッシュさん、マドゥマラさん夫妻は、袋井北公民館などを中心に活動している「いろは日本語教室」の生徒さんです。3人とも着物を着るのは初めてです。  国際交流員のサム・ウィーグナーさんとヘザー・ベイツさんも加わり、師走の遠州三山に出かけました。 世界に通じる遠州三山の魅力  ナカムラさんは、日本に来て12年。法多山には毎年、初詣に出かけているそうです。油山寺の三重の塔は美しく素晴らしいとナカムラさん。初めて行った可睡斎では元旦から開催されている「ひなまつり」の準備を見学。絢爛豪華なお雛さまにしばし言葉を失った様子でした。  プラケッシュさんご夫妻は、ナラヤンさんが日本に来て13年、マドゥマラさんが7年になります。法多山のお団子が大好きで、紅葉まつりなどにも出かけるそうです。袋井市の印象を尋ねると、「自然豊かで歴史や文化を身近に感じることができる素敵なまち」と、語ってくれました。  皆さんとお寺を訪れ、和装の良さを知り、遠州三山の魅力がインターナショナルであることに気づくことができました。 撮影協力:いろは日本語クラブ 着物・着付け協力:丹羽屋呉服店