P25 輝くふくろいの人 子どもから大人まで、みんなに科学の楽しさを伝えたい 街角かがく倶楽部・袋井 名倉和弘さん(川井) 「科学の一番の楽しさは、自分の力で法則を発見していくことです。ぜひ多くの人に、この楽しさを知ってほしい」  フラスコやビーカーなどの実験器具や手作りの原子模型が並ぶ理科室でそう話すのは、名倉和弘さん59歳。現役の教師として高校で教べんを執る傍ら、休日には月見の里学遊館や山名コミュニティセンターなどで「たのしい仮説実験教室」を定期的に開催しています。 楽しさを知り、科学を好きになってほしい  学生時代に科学の楽しさを知り、教師の道に進んだ名倉さん。わかりやすく面白い授業で生徒から人気が高かったのですが、あるとき壁にぶつかります。 「別の高校へ移る際、生徒がお別れの色紙をくれたんですが、そこに『先生の授業は楽しくて好きだけど、物理は嫌い』という言葉があったんです。自分の授業に自信があったけど、鼻をへし折られてしまいました」  科学を好きになってもらうにはどうしたらいいか。悩んでいた名倉さんが出会ったのが、“仮説実験授業”でした。これは、問題の答えを各自で予想し、みんなで討論した後、実験で確認することを繰り返して、共通する結果から法則に気づいていくための授業です。 「手間はかかるけど、この授業なら法則を発見する楽しさを味わえるんです。学生にも好評で、アンケートでは8割近くが面白かったと回答するんですよ」 多くの人に魅力を伝えるため、市民向け講座を開始  この授業を小学生や社会人にも体験してほしいと思った名倉さんは、10年前に市民向け講座「たのしい仮説実験教室」を始めました。しかし、初めは周知不足からか、3回目の講座までは参加者がゼロだったといいます。 「4回目に教え子がおばあさんと一緒に来てくれました。初めての参加者だった2人が熱心に予想や討論をしていたのがすごく嬉しくて、記念にその日の会話を全部書き出して2人に贈ったほどです。おばあさんは後日、別の講座にも参加してくれたんですよ」  その後は着実に参加者も増え、今では募集後すぐに満員になってしまう講座もあるといいます。 「自分で考えること」を楽しんで  科学の魅力は、自分で考えて発見する楽しさにあるという名倉さん。講座を通じて、考える楽しさを実感してほしいといいます。 「科学史に残る発見は、自分の考えを持って観察したから気付くことができたんです。日常生活でも、何も考えずにいるとたくさんのことを見落としてしまいます。  これからもこの講座で、自分で考える楽しさや発見する喜びを伝えていけたら、嬉しいです」