P27 輝くふくろいの人 空間が呼び覚ます感覚 そこから見えてくるもの 現代美術作家/建築デザイナー 村松正之さん(下町)  「どうしてこういうものを求めるのか、自分でも説明できない。でも、内から湧き上がるものに抗うためには、やらざるを得ないんです。  目に映る風景や形ではなく、空間としての存在感や、場が伝える感覚を感じ取ってほしい」  そう話すのは、国内外で数々の作品を発表してきた村松正之さん(66歳)。空間全体を作品として作り上げるその手法は、インスタレーションと呼ばれる現代美術の表現方法の一つです。  正之さんがアートの道を志したのは高校時代のこと。演劇部に所属していたことから、舞台芸術に興味を持ち、東京藝術大学へと進学します。 在学中は金属工芸の鋳金を専門に取り組み、いくつかの個展を開いていく中で、いつしか表現の対象は一個のもの”から、空間全体”へと移っていきました。  「日常の空間を、異質でエネルギーの高い、力のある場所にする仕掛けを考えたかったのかな」  創作の意欲はますます高まり、20代の最後には年間6回の展覧会を開催するなど精力的に活動していましたが、その年を境にしばらく表現の場から遠のいてしまいます。  「前へ前へと進みすぎて、精神的にも経済的にもパンクしてしまったんですね」と当時を振り返る正之さん。  その後、10年のサラリーマン生活を経て、袋井市へ帰郷します。  「実家に戻ってからは、自分で家をリフォームしたり、デザイン学校の講師をやったりしていました。  そんな折り、陶芸をやっている高校時代の友人との再会があって、二人でそれぞれの作品を展示しようという話になったんです」  友人に誘われて17年ぶりに展示を行ったことを契機に、創作活動を再開。国内のほか、2007年にはドイツで、今年5月にはポーランドでも展示を行い、大きな関心を集め、高い評価を受けました。  そして、 この9月には、月見の里学遊館で、ポーランドでの展示の帰国報告展を開催します。  「僕の場合、たまたまインスタレーションという表現をとっていますが、解釈の仕方を強要するものではないので、自分の思うままに感じ取ってくれればと思います。  それが言葉にならなくても構いません。言葉に置き換えて安心したり納得したりせず、言葉にできない豊かさを大切にしてください」  正之さんの作り出す空間から、あなたは何を感じるのか。ぜひ、その場に身を置いて体感してください。 月見の里学遊での展示について、詳しくは本紙12ページ「眼差しの先JAPANART展」をご覧ください。