P21 輝くふくろいの人 スーダンとソロモン諸島で看護指導 自分の知識が少しでも現地で役立てば 元青年海外協力隊員 工藤充さん(久津部西)  「日本では、努力をすれば夢が叶い、生活も保障されていますが、途上国では環境がそれを許してくれません。おこがましいかもしれませんが、そういう国々に日本の知識や技術を少しでも分配できればと思うんです」  活動の記録資料を見ながら話してくれたのは工藤充さん(39歳)。青年海外協力隊の任務を終えて、今年1月に帰国しました。 留学や海外旅行での経験が契機  工藤さんが途上国での支援活動に興味を持ったのは、海外での経験が大きいといいます。  「洋楽が好きなことや英語への憧れからカナダに留学した時に、国際協力のNGOで働く人たちと出会ったんです。それで自分も、何か出来ることをやってみたいなと思って。また、バックパッカーとして東南アジアの国々を旅行した時に、貧富の差の激しい現地の様子を見たことも影響があったと思います」  留学後は、介護士として働きながら通信制の大学を卒業。その後さらに、東海アクシス看護専門学校に通い、看護を学びます。  機会が訪れたのは、看護学校を卒業し、中東遠総合医療センターの救急病棟で看護師として働き始めた4年目。国際協力機構(JICA)の海外協力隊の募集を見つけて、応募しました。 派遣先で医療環境の改善に尽力  協力隊として最初に訪れたのは、アフリカのスーダン共和国にあるガダーレフ教育病院。当初の活動要請は、看護師の技術向上や感染防止対策などでしたが、薬や器具、ごみ等が院内に雑然と置かれている様子を目の当たりにした工藤さんは、整理・整頓・清掃・清潔・躾の「5S」の普及から取り組みを始めます。  「環境整備が看護の基本であることは、日本の病院でも指導されることです。こちらのやり方を押し付けるのではなく、自分たちで考えて、やる気になるよう、時間をかけて説明や研修を行いました。  治安上の国家非常事態宣言が出て、1年3か月で急きょスーダンを去りましたが、帰国後に現地から『5Sまだ続けてるよ』と写真が送られてきた時はうれしかったですね」  その後、まだ協力隊の任期が残っていた工藤さんは、ソロモン諸島ギゾ島での活動にも手をあげ、現地のギゾ病院での生活習慣病の予防啓発活動などに、さらに半年ほど従事しました。 約2年間の活動を振り返って  「活動を通して、言葉や文化が違う中でのコミュニケーション技術や自分が置かれている環境を大事にすることの大切さ、時には相手のぺースに合わせることの重要性などを学びました。  僅かな期間でしたが、自分の取り組みが現地で根付いてくれることを望みます。  また、派遣が決まったあの時、『いってらっしゃい』と快く送り出してくれた妻に感謝しています」  機会があれば今後も途上国とつながる仕事をしたいと話す工藤さん。気持ちはもう、次の活動に向けて動き始めています。