P18 輝くふくろいの人 育てた牛で最高賞を受賞 夢は市内産牛肉のブランド化 肉用牛肥育経営 永田牧場 永田慎次さん(富里)  「牛は嘘をつかないんです。愛情を掛けた分だけ返してくれる」  優しいまなざしで牛を見つめながら話すのは、肉用牛の肥育を行う永田慎次さん(42歳)。永田さんが育てた牛は、3月に東京で開催された第11回全国肉牛事業協同組合枝肉共励会・交雑種スモール導入の部門で、最高賞にあたる経済肥育賞を受賞しました。 愛着と結婚を機に本腰。受賞は、牛のデータ収集と体調管理の賜物  永田さんが本格的に肉牛経営に取り組み始めたのは27歳の時。当時は、勤めていた建設会社を辞め、父の経営する牛舎で餌やりを手伝いながら次の仕事を探していたと言います。  「朝晩毎日、牛に餌をあげていると、愛着が湧いてくるんですね。ちょうどその頃、結婚したこともあって、本気でこの仕事をやろうと決めたんです」  やるからには自分にできることを取り入れようと、会社員時代の経験を活かして業務をデータ化。餌の量や時間、飼料の配合などもデータで記録し、日々見返しては肥育の工夫につなげていきました。結果、経営も効率化され、飼頭数も180から260に増頭。全国肉牛事業協同組合には3年前に加入しました。  また、牛の体調管理には常に気を配ります。  「牛はストレスに弱く、ちょっと熱がある状態で放っておくと、すぐに弱ってしまうんですよ。  うちは24か月齢で出荷するので、これを人間の人生90年に例えると、牛にとっての1日は、人にとっての1か月と同じだと思って愛情を注いで育てています。  体調の良し悪しは、毎日の餌の食べ具合などで分かりますから、普段からどれだけ牛を気に掛け、接しているかが大切なんです」 今も頭に残る忘れられない言葉  肉牛農家を営む上で、永田さんの頭をいつまでも離れない言葉があります。  「この道に入って2年くらい経った時に同業者から言われたんですよ。『俺たちは牛を飼ってるんじゃないぞ。牛に飼われているんだぞ』って。  言った本人の真意は分かりませんが、ああ、その通りだなって思ったんですね。  牛がいるからこの生活ができるんだと。だからお互い対等でないと、牛の視点からも見てあげないといけないんだなって」 夢は袋井牛のブランド化 地産地消を盛り上げたい  丹精込めて育てた牛が評価され、喜びもひとしおの永田さんには、もう次の目標があります。  「今、市内には自分を含めて肉牛農家が3軒あるので、この3軒で市内産牛肉のブランド化を進めていきたいと思うんです。  また、うちだけでなく、市民の皆さんに地元の農畜産物を地元で消費してもらえるよう、地域の地産地消を盛り上げていければいいなと思います」  本当の夢はまだこれから。大きな目標に向かって、今日も永田さんは、牛舎に足を運びます。