P02-03 幼小中一貫教育で、自立力・社会力の基礎となる「自己有用感」を育む  市では幼児期から中学校までの12年間を通して、自立した人間として主体的に行動する「自立力」と多様な人々と協働しながら新たな価値を創造する「社会力」を兼ね備えた子どもを育てる幼小中一貫教育を推進しています。  その「自立力」と「社会力」を身に付ける上で、基礎となる重要な感情が「自己有用感」です。  市内の各学園(幼小中一貫教育学区における各幼稚園・小学校・中学校)では様々な取り組みを通して、子どもの自己有用感を育んでいます。 問 教育企画課幼小中一貫教育推進室 TEL44-3194 「自己有用感」とは?  誰かの役に立った、誰かに喜んでもらえたなど、所属する集団の中で自分がどれだけ大切な存在であるかを、自分自身で認識することです。  自己有用感は、自分への自信(自己肯定感)を高め、自分をより良くする行動が選択できる子どもを育てます。 「居場所づくり」と「絆づくり」が基盤  自己有用感は、自分が安心できる居場所があり、その中での人との関わりを通じた信頼関係が基盤となって初めて育まれるものです。  このため、市では「魅力ある学園づくり」として、各学園で子どもの居場所づくりや絆づくりを推進し、各校や各園での生活が、子どもたちにとって安心で楽しいものになるように取り組んでいます。 自己有用感を育む取組 関わりを大切にするプロジェクト型保育   子どもたちが思い思いの発想で遊びを広げ、考えを深めていけるよう、市内の公立幼稚園では、子どもの考えに寄り添って指導や助言などを行う「プロジェクト型保育」を行っています。子どもが主体的に考えて行動するプロセスを大切にするこの保育のポイントは、大人のものさしや考え方を押し付けないことです。教員は、子どものつぶやきやアイデアに耳を傾け、とことん寄り添います。  プロジェクト型保育では、子どもたちは必然的に友達との関わりを多く持ち、相手の考えを聞いたり、自分の考えを伝えたりすることの大切さを学びます。自分の思いを他者に受け入れてもらうことや、友達と協力して物事を解決する経験の積み重ねが、幼児期からの自己有用感を育んでいきます。 「わかった!」「できた!」という学びの実感   一人ひとりが自分の考えを持ち、他者と意見を交わすことで、より考えが深まり、主体的な学習参加につながるとの考えから、市では授業の様々な場面で、考えの視覚化に役立つ「思考ツール」を活用しています。思考ツールは、自分の中で考えを深めるとともに、他者に考えを説明する上でも効果的です。  また、各教室に電子黒板機能付きプロジェクターや書画カメラ、指導用デジタル教科書を導入するなど、ICT機器の活用も積極的に推進していて、現在、6人に1台の割合で整備している学習用タブレットも、3学期から1人1台の割合で整備し、子どもの学習環境の充実を図っています。  授業を通して、「わかった」「できた」という学びの実感を積み重ねることで、子どもは自分への自信を深めます。 異年齢集団での交流  「人と関わりたい」という意欲が低いと人間関係に希薄さが生まれ、他人を平気で傷つけたり、ルールを守れなかったりと、集団への参加ができにくくなることにもつながります。  そのため、各学園では学年や校種を超えた交流を積極的に進めています。年齢差のある交流の中でお互いに関わり合い、「誰かの役に立つことができた」「自分を認めてもらえた」「あんな上級生になりたい」といった経験をたくさんすることで「関わって良かった」という気持ちが芽生え、それがさらに「もっと人と関わりたい」という思いに変化していくのです。  人と関わることによって「うれしい」「認められた」「役に立った」という気持ちを持つことで、「社会力の基礎」となる自己有用感が育まれます。 子どもたちの人生を豊かにする自己有用感 袋井あやぐも学園・袋井中学校 幼小中一貫コーディネーター 橋壮臣教諭  自己有用感が高まることで、子どもたちは社会に出ていく時に、自分が何のために働くのか、どんな仕事がしたいのか、その意味や意義を考えるようになります。誰かの役に立てるような仕事をしたいと思えることは、その子ども自身の人生をも豊かにします。 家庭でできる自己有用感を育む言葉掛け  子どもが大人に言われて一番うれしい言葉は何でしょうか。それは「ありがとう」です。  何かを手伝ってくれた時や何気なく物を取ってくれた時など、その気遣いに「ありがとう」の言葉を掛けることで、子どもはうれしい気持ちでいっぱいになり、誰かの役に立ったことの喜びを感じます。  その時、「お母さん(お父さん)は、うれしいな」「○○さんのおかげで早く終わったよ」「とても助かったよ」などと感謝の内容を具体的に添えると、より効果的です。