P04-09 シティプロモーション-City Promotion- 今、市民が語り出した  「日本が少子高齢化し、人口が減少することによって消滅する都市が出る」日本創生会議が出したレポートは、私たちに衝撃を与えました。  このため、国は地方創生を掲げ、大都市への人と富の集中を是正し、全国の自治体にまちの魅力を生かした自活力あるまちづくりを目指すよう求めました。  こうしたことから、全国で移住定住や観光・産業振興への取り組みが活発化し、今やシティプロモーション全盛期です。  市は、幸いにして人口を維持し、ラグビーワールドカップ2019TMの開催によってまちを全国発信するチャンスに恵まれています。  また、ICT技術の進歩により、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)などを活用し、文章や写真、動画を用いて、誰もが気軽に情報発信することができるようになりました。  袋井市の魅力とは何かを一人ひとりが考え、自らの言葉でまちの魅力を発信するために。また、全国から「このまちはいいね」と言ってほしいから。みんなでシティプロモーションについて考えましょう。 問 企画政策課シティプロモーション室 TEL44−3104 「ふくろいのこと知ってますか?」 修学旅行でPR  袋井東小学校の児童が、修学旅行で市をPRすると聞きつけ、同行しました。  袋井東小学校は毎年、修学旅行で東京に出かけます。日本の中心で様々なことを見聞きし、知識や経験を深めるとともに、自らのまちについても見直す機会としています。  そのため、修学旅行に出かける前、児童たちは袋井市に関する資料を集め、各々に市をPRするための冊子を作ります。この資料はA5判8ページからなり、ふくろい遠州の花火や遠州三山、クラウンメロンなど、袋井の魅力がこまかく紹介されています。修学旅行では、この冊子を活用し、街行く人へ積極的に声を掛け、市のことを紹介します。  6年2組の村井優月(ゆづき)さんは、浅草寺門前の仲見世通りで、沖縄からご主人と芝居見物に見えた高橋勝子さんに声を掛けました。村井さんは冊子を手にしながら、夏に開催される花火大会では2万5千発の花火が打ち上げられ全国有数の規模であることや、特産品であるクラウンメロンは、一本の木に一つの果実しか実らせないことなどを説明し、高橋さんを驚かせていました。  説明を終えた後、高橋さんに感想を伺ったところ、沖縄県は海に囲まれているため、県外に出掛ける時は飛行機を使うことが多いとのこと。東京や大阪はたまに訪れるのですが、静岡県には行ったことが無く、残念ながら袋井市のことも知りませんでした。今回、村井さんからの説明で袋井市について関心を持つことができました。  何よりも、自分のまちのことを熱心に語ろうとする村井さんの姿に心を打たれたといいます。  こうした取り組みは市内の小学校に広がり始めています。 パナソニック静岡工場×袋井市 プロジェクションマッピングで地元PR  パナソニック(株)アプライアンス社ランドリー・クリーナー事業部静岡工場と袋井市は、平成29年12月1日から、プロジェクションマッピングによるシティプロモーションを開始しました。  この取り組みは、パナソニックが今年、創業100周年を迎えることから、パナソニックの映像技術を生かしたPR方法として静岡工場が提案し、機器などの整備を行いました。市は、この提案を受け、法令手続きやコンテンツ作りなどに協力。約1年をかけ実現しました。  投影用の動画は、「フッピー」やパナソニック製洗濯機のマスコット「あわっち」が、観光名所やビュースポット巡るなど、袋井市と静岡工場をPRする内容となっています。  JR東海道線に面した工場棟南面外壁に、火・木曜日を除く週5日、午後5時から9時まで(季節によって変動)、幅40メートル、高さ23メートル、約  1,000インチで投影します。在来線や新幹線の車窓からも映像が確認できるため、発信効果が期待されます。  投影初日は、工場敷地内において点灯式を実施。市民や市職員、従業員など約200人が集まり、映像を楽しみました。  廣田亮治静岡工場長は、「パナソニックグループが100周年を迎えることを契機に、東海道線沿線に立地している工場の強みを生かしたプロジェクションマッピングに取り組むこととなりました。この袋井で44年間操業できたことに感謝し、これからもモノづくりを通じて皆様の暮らしを豊かするとともに、地域の活性化にも貢献できるよう取り組みたいと思います」と語ってくれました。 首都圏のみなさんに トップセールス  首都圏在住の袋井市出身者や、ゆかりの方が年1回東京に集い「ふくろい東京交流会」を開催しています。  交流会は、袋井市長をはじめとする市の代表者が参加者に直接、市をPRすることを目的に平成23年度から始まり今回で7回目。平成30年1月19日、首都圏からの参加者約110人と、地元参加者約60人が都内のホテルで交流。活発な情報発信、情報交換が行われました。  今回は「袋井⇔世界 ラグビーで世界とつながるまちづくり」をテーマに構成し、第一部の講演会では、アジアラグビー名誉会長で、(財)ラグビーワールドカップ2019組織委員会事務総長特別補佐の徳増浩司(とくますこうじ)さんが講演。W杯の招致に奔走し、見事実現に導いた経験やラグビーをコミュニケーションの手段として世界から袋井に訪れるみなさんと積極的に交流してほしいと語りました。  第2部の交流会では、ラグビーW杯に向けての取り組みや静岡理工科大学の研究発表など情報発信のためのブースが設けられ、クラウンメロンやイチゴ、たまごふわふわなどの試食も行われ、参加者の五感にうったえかける積極的なPRが行われました。 袋井って『いいね』  シティプロモーションの第一人者といわれる東海大学教授「河井孝仁(かわい たかよし)」さんを講師に「袋井市魅力創造のワークショップ」を平成29年7月から毎月1回開催しています。  ホームページなどで呼びかけ、現在約20人の市民や市職員が参加。市の魅力を発見もしくは再認識するとともに、それを情報発信する手法について学んでいます。 ワークショップ参加者からは…  メロン農家の安井さんは、「丸凧ギャラリーやすもう寺(明香寺)など、タウンウォッチングで新しい発見がありました。市民のみなさんが袋井のことについて知ることができるツアーが企画できたら良いと思います。」と提案。  大学三年生の鷲山さんは、「ワークショップに参加してから、大学の友人を袋井に招くことが多くなりました。これまでずっと袋井で暮らしてきましたが、のどかなところが自分には合っていると思います。」と、まちの良さを再認識したようです。  市内でコーヒー店を経営する浜小路(はましょうじ)さんは、「出店するために色々なまちを巡りましたが、妻の実家のある袋井に店を構えて10年になります。私のコーヒーは、どなたにでも味わっていただけるよう主張しすぎない味わいを目指しています。このまちの良さって、ゆったりとしていて誰にでも馴染むところではないでしょうか。」と分析。  声楽家で子育て中の安間さんは「出産を機に東京から袋井に帰って来ました。地元の皆さんにあたたかく迎えてもらい、子育てできている今に感謝しています。」と語ってくれました。  各々、まちの魅力についての捉え方は違えども、まちへの思いの深さを感じます。この思いを市内外に届けるため、ワークショップはまだまだ続きます。 まちに「真剣(マジ)」になるために 東海大学文学部広報メディア学科教授 河井 孝仁 さん 過剰な魅力の抽出、そして発散  シティプロモーションは、まず市民自らの言葉でまちの良さを語ることから始まります。ワークショップでは、袋井市の魅力を人、物、事、所、過去(歴史)、仕事、そして今後の可能性の7つの分野から、1人100個以上を挙げ、これを基にまちの魅力を語るストーリーづくりに取り組んでもらっています。魅力を100個抽出するには観光名所やイベント、特産品などすぐに思いつくことだけでは足りません。夕日がきれいなビュースポットや職人さんなど特技を持った人、地元で愛され続けている郷土食など、魅力を深く掘り下げていくようになります。そこで新たなまちの魅力を発見もしくは再認識することができます。  そして、この魅力を生かし「袋井だとこんな暮らしができる」「袋井に行けば幸せになれる」といった物語を組み立て、まちを具体的にイメージし語ることができるようにします。  今後のワークでは、「袋井ってこんなまち」をメッセージ化し、どのように活用していくかを考えて発信につなげていきたいと思っています。 シティプロモーションは市民の参加・参画から  少子高齢化や人口減少に歯止めをかけるため、全国の多くの自治体では移住定住や地域活性化などを目的としたシティプロモーションが展開されています。  私は、こうした全国の自治体でワークショップに取り組んでいますが、シティプロモーションを他人事ではなく自分事として考えられる市民を増やしたいと思っています。  まちの魅力は人口や行政サービスの良し悪しで語られるべきものではありません。まちについて真剣に考える人がいる。そのためのまちづくりに参加・参画する人がいる。自らが暮らすまちを愛し、誇らしげに語る人がいる。それだけで素敵なまちだと思います。そんなまちには、自然と人が集まってくるものです。  袋井市のワークショップには、様々な人が参加していますが、すべてがフラットで、何より楽しげな姿がとてもいいですね。また、月1回ペースではありますが、理解が深まるようにじっくりと取り組んでいます。このワークのねらいが情報発信することを目的とせず、まちを情報発信できる人づくりを目的とした活動だからでしょう。  まちの魅力の源は「市民」です。  袋井市で暮らす生き生きとした毎日を、皆さんの言葉で語りましょう。 ※聞き取りを編集部でまとめています。 河井 孝仁(かわい たかよし) 東海大学文学部広報メディア学科教授。博士(情報科学・名古屋大学)。静岡県情報政策室、(財)静岡総合研究機構研究員を経て現職。神奈川県川崎市、栃木県那須塩原市、岩手県北上市などのシティプロモーションに関わる。専門は行政論、シティプロモーション。公共コミュニケーション学会会長理事、総務省地域情報課アドバイザー、(社)日本広報協会広報アドバイザーなどを務める。