P02-03 ICT×幼小中一貫教育 〜これからの時代の新しい授業へ〜 学習用タブレット1人1台整備完了  「考える力」の育成を目指し、ICTを活用した教育の充実に努めている袋井市では、県内でもいち早く1人1台の学習用タブレットと高速大容量通信ネットワーク(改築・改修工事中の浅羽中学校を除く)の整備を完了させ、小・中学校で使用しています。  全ての児童・生徒がいつでも学習用タブレットを利用できる環境の下、就学前から切れ目なく続く幼小中一貫教育と充実したICT教育により、未来を生きる子どもに必要な生きる力≠育成します。 問 教育企画課幼小中一貫教育推進室 TEL86-3122 学習用タブレットとは  学校の授業や自主学習などを支援する様々なアプリが入った板状のコンピュータ端末です。画面タッチで感覚的に操作でき、用意された通信環境を使って、インターネットにもアクセスできます。  市では、小・中学校の全児童・生徒用に約8千台の学習用タブレットを整備。学校での子ども達の学びのサポートに役立てています。 探究の範囲を広げ、「考える力」を育てる  現在、小・中学校では、思考力や課題の発見、その解決力など、これからの社会で求められる「考える力」を育むための「探究的な学習」に重きを置いています。「探究的な学習」とは、問題の解決に向けて自ら課題を設定し、情報を収集・整理・分析して、考えをまとめ・表現することを繰り返していく学習活動のことです。学習用タブレットの利用は、これらの学習の推進に大いに役立つものです。  従来型の多くの授業では、子ども達は教師の問いや教科書の設問に対し、用意されたプリントや資料などの限られた探究の範囲の中で自分の考えを組み立てて、答えを導き出していました。  これに対し、タブレットを活用した授業では、タブレット上で利用できる多種多様な「思考ツール(※)」を足掛かりに課題解決のための考え方の糸口を探したり、後述する協働学習アプリの機能を使って、グループやクラスみんなの意見を参考にしたり、インターネットやデジタル資料集などを利用して知りたいことを調べたりするなど、幅広い探究の範囲から様々な情報を自ら集め、それを整理・分析することで、自分の考えを組み立てていきます。  また、調べたことや整理・分析したこと、参考にした友達の意見などは、学習用アプリの中に日付順・教科別に記録されるため、いつでも自分の“学びの足跡”を振り返ることができます。このため、上手く答えにたどり着けない場合でも、どこでつまずいたり、行き詰ったりしたのか、自分自身で気が付くことができ、課題解決に向けた探究の道筋を再び歩み始めることができるのです。 「協働的な学び」と「個に応じた学び」の双方をサポート  授業で主に用いる「協働学習アプリ」では、思考ツールなどを使ってタブレット上で可視化したそれぞれの考え方や意見などを、テレビのクイズ番組などで回答者全員の解答をモニターへの一覧表示で見るかのように、友達やクラス全員の考えを手元の画面に表示できます。このため、他者の考え方に触れたり、それをもとに質問や討論などを行う中で考えを再構築したりするなど、異なる考えからも学ぶ“協働的な学び”の充実につながります。  また、学習内容の理解や知識の定着度は子どもによって異なります。タブレットを使った学習では、授業での子どもの“学びの足跡”を教師が適宜確認し、きめ細やかな助言をしたり、自主学習アプリなどを利用して子ども自身が反復学習したりすることなどにより、児童・生徒一人ひとりの課題やペースに合わせた“個に応じた学び”をより最適化していくことも可能です。 新しい学びのカタチで子ども達の未来を育てる  AI(人工知能)や情報通信技術の飛躍的な発展により、将来、子ども達の半数以上は、現在存在しない職業に就くことになるという予測があります。変化が激しい、これからの時代を生き抜くためには、必要な情報を自ら選び取り、その情報を上手く活用していく「考える力」の育成が何よりも重要です。  教育のあり方にも変化が求められる中、市では、1人1台の学習用タブレットを学校教育の場で効果的に活用していくことにより、未来を生きる子ども達に必要な“生きる力”を育んでいきます。 ■考え方の糸口となる「思考ツール」の例(学習用タブレット上で自由に利用できます) 思考スキル @比較する【複数の事象の相違点や共通点を見つける】 ・〜と比べて、○○は△△だ ・〜よりも○○の方が△△だ A順序立てる【事象の内容から順序を意識し、整理する】 ・〜と○○は、△△とつながる ・〜と○○は、△△だった B理由づける【問いに対する答えとその根拠を明確に関係づける】 ・〜の理由は、○○だ ・〜だから、○○だ。 思考ツール ベン図 座標軸 ステップ・チャート プロットダイアグラム フイッシュボーン クラゲ・チャート 学習用タブレットを活用してこんな授業や学習も! ◎音読の様子や体育での体の動きを動画で撮影し、改善点をチェック 投球フォームの確認 自分で繰り返し確認 音読の記録 お互いに協力して撮影 ◎世界に向けて意見を発表 袋井中の1年生が海外校主催の「SDGs(※)世界同時授業」に参加。 世界の様々な学校の生徒に向けて、自分たちの考えを発表しました。 袋井中の1年生が海外校主催の「SDGs(※)世界同時授業」に参加。 ※国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」の略称。 育てたいのは、自ら考え、表現する子ども達  学習用タブレットの活用により、生徒達の学びの姿勢に変化が起き始めていると感じます。以前は黒板の書き写しだけだったノートに、自分の考えや友達の発言の良さを書き込む子が増えてきました。タブレットを使った授業の中で自然と行われる「自分で情報を取捨選択し、考えをアウトプットする」という学びの手法とその意義に、生徒達も気付き始めているのかもしれません。 袋井あやぐも学園袋井中学校 辻村篤史 教諭