P19 うまみ際立つ「白葉茶」を研究の末に製品化 〜お茶を楽しむ選択肢を増やしてファンの裾野を広げたい〜 安間製茶代表 安間孝介さん(菩提) 「初めて飲んだとき、すごい衝撃を受けたんですね。お茶というよりも、だしに近いような凝縮されたうまみ。『お茶でこんな味が出せるの?』って」  新芽の芽吹く茶畑で、茶葉の成長を確かめながら話すのは、安間孝介さん(41歳)。特別な栽培方法により、うまみや甘みの成分が約3倍も増す「白葉茶」の研究・生産に取り組んでいます。 妻の実家に婿入りし、知識ゼロからお茶農家に  都内で働いていた安間さんが茶業に携わるようになったのは、中学の同級生で、後に妻となる良子さんと東京で再会し、交際を始めたことがきっかけです。  三姉妹の長女である良子さんの実家は、祖父の代から続くお茶農家。お茶が大好きで、実家のお茶をなくしたくないという思いを付き合う前から聞いていた安間さんは、交際が進み結婚を考える中で、自分が婿に入り、安間製茶のお茶を継ぐことを決意しました。 農林大で「白葉茶」を知り、研究の末に製品化  結婚を機に33歳で袋井に戻った安間さんは、結婚式の翌週に県立農林大学に入学。茶業を基礎から学ぶ中、県茶業研究センターの研究発表で出されたお茶を試飲し、その味に衝撃を覚えます。  爽やかな甘みと濃厚なうまみを兼ね備えた、これまでにない味わい。深い味にもかかわらず、すっきりとした口当たり。白葉茶との出会いでした。  「白葉茶は、摘採前の一定期間に日光を99・99%遮ることで茶葉に含まれる苦み成分が減る一方、うまみや甘みのもととなるアミノ酸の量が増加し、非常に深い味わいになるのですが、栽培が難しく、労力やコストもかかるため、手を出す農家はほとんどいません。  自分は素人だったからこそ、このお茶に挑戦してみようと思えたんですね」と当時を振り返る安間さん。茶業研究センターの協力を得て卒業論文で白葉茶を研究し、その後も研究を続け、平成30年に、ついに製品化にこぎ着けました。  白葉茶は、その味の魅力に加え、収穫量が少なく希少性が高いことから、毎年、新茶ができる前から予約が殺到するといいます。 様々な活動を通じてお茶好きな人を増やしたい  白葉茶のほか、うまみを引き出す瓦製急須の開発やクラウドファンディングを活用した積極的な事業展開、インターネットによる情報発信など、お茶を盛り上げる様々な活動に精力的に取り組んでいる安間さん。その原動力のもとには、お茶好きな人を増やしたいという純粋な思いがあります。  「お茶はそもそも嗜好品。茶葉でも急須でもパッケージでも、様々な入り口を作って、多くの人にお茶に興味を持ってもらえるようにしていきたいと思っています」  特に若い人にお茶を好きになってもらいたいと話す安間さん。これからもお茶の魅力を伝える様々な取り組みが期待されます。