P20 輝くふくろいの人 茶園跡地で新規就農、オリーブの栽培に挑戦 〜自然のことも人のことも考えた持続可能な社会づくりに貢献したい〜 ピースフルオリーブ代表 松本達弥さん(広岡) 「どうしたら地域の自然や里山の風景を未来に残していけるのか。言ってしまえば、オリーブの栽培はその手段の1つなんです」  澄み渡る青空の下、オリーブの生長を確かめながら話すのは、松本達弥さん・34歳。小笠山山系にある市内3箇所の農園で、約700本のオリーブを栽培しています。 いろいろなタイミングの巡り合わせ  就農を志したのは、今から5年前。20代のうちにどうしても行ってみたかったという“世界一周の船の旅”から帰国し、次の目標を探していたときでした。  「本当は酪農をしてみたかったんです。でも、一からそれを始めるのはすごく大変。そこで地元でできる一次産業を考えていたとき、たまたまテレビで小豆島のオリーブ畑が映って、袋井でもできるんじゃないかと思ったんですね。  また、ちょうどその頃、県オリーブ普及協会を立ち上げる話が市内であって、茶葉の価格下落や高齢化、担い手の減少などで荒廃茶園が増えていること、オリーブオイルの国内需要が増えていることなども知り、ああ、これはもう『オリーブをやれ』ってことなんだなと」 1・7haの農場は、もとは全て耕作放棄地。土壌改良や肥料に苦戦  まずは畑を確保するため、荒廃茶園を探しては貸してくださいとお願い。耕作放棄地の有効活用になるため、ほとんどの人が快く承諾してくれました。  手が掛かったのは土壌の改良。酸性土壌の茶畑跡地にオリーブをそのまま植えても枯れてしまうため、石灰で土を中和したり、雑草を茂らせて土中の微生物から変えたりと、土づくりには一からの取り組みが必要でした。  そしてやっと苗木の植え付け。苗木の近くに草が生えると害虫被害で枯れてしまうため、植えた後は定期的な草刈りも欠かせません。  その後の施肥にしても何にしても、新規就農で知識も経験もない松本さんは、ほぼ独学で農業を学び、オリーブ栽培への試行錯誤を重ねてきました。 5年目で待望の収穫へ。目指すは地域とともに歩む農業  はじめの3年は実が成らず、4年目を迎えた昨年からようやく少量の実が採れ始めたという松本さん。5年目となる今年は、花もたくさん咲き、実も着いたようで、秋の収穫に期待が高まっています。  すでに市内のイタリア料理店や東京のレストランからも引き合いが来ているとのこと。そんな松本さんに今後の夢を尋ねると…、 「オリーブですごくもうけたいとかではなく、耕作放棄地を少しでも解消して、その中で、地域の方々に働いてもらったり、地産地消や子どもたちの食育などにつなげていけたりすればいいなと思うんです。  郷土の自然や里山、農地を守るために、自分に何ができるかを常に考えていきたいです」との回答。  オリーブの花言葉は「平和」と「知恵」。人と自然が上手に関わる地域農業の未来に向けて、松本さんは今日もオリーブ畑へと向かいます。