P02-03 徳川家康と袋井  NHKにて放映中の大河ドラマ「どうする家康」では遠江(静岡県西部)も舞台の1つとなっており、三方ヶ原の戦い(浜松市)や高天神城攻め(掛川市)などで奮闘する、若き徳川家康の活躍を描いています。  同ドラマの放映に合わせて郷土資料館で開催している企画展「袋井版 歴史上の家康と神として語られる家康」の内容を中心とした、袋井での家康の足跡を紹介します。 問 生涯学習課文化財係 TEL23-9264 ◆以下、市内の地名・城等は太字で記載 家康の遠江進出と久野宗能  1542年、三河(愛知県東部)の小大名・松平家に生まれた家康は、8歳頃〜19歳まで駿河(静岡県中央部)の大名・今川家の一員として駿府(静岡市)で過ごしましたが、1561年に今川家と決別し、織田信長と同盟を結びました。  後に三河の戦国大名となった家康は、1568年、27歳で遠江へ進出し、掛川城に籠城した今川氏真を攻めるため、不入斗に布陣します。この時、馬伏塚城城主・小笠原氏興や久野城城主・久野宗能が徳川方についたことで、その他の遠江の武士たちも次々とそれにならいました。 特に宗能は家中の家康反対派を粛清することで、家康に強い忠誠を示しました。遠江の武士たちをまとめた家康は、翌年氏真を降伏させました。  遠江を手に入れたのもつかの間、1572年に甲斐(山梨県)の武田信玄が木原まで進軍。遠江の武士たちが続々と武田方に寝返る中、宗能は徳川方として信玄に抵抗します。結局、信玄は周囲を湿地に囲まれた久野城への攻撃をあきらめ、西に進みました。 久野城は、家康の本拠・浜松城と東の拠点・掛川城を結ぶ要所に位置するため、宗能が城を守り続けたことは家康にとって心強かったでしょう。 高天神城攻めの拠点 馬伏塚城  三方ヶ原の戦いで家康を敗走させた信玄は、翌1573年に急死します。跡を継いだ息子の勝頼は、1574年に高天神城を落城させ、再び遠江をおびやかしました。家康は、高天神城を奪い返す拠点として馬伏塚城を修築しました。 家康の家臣の日記によると、1577〜1581年までの間に、家康は馬伏塚城に6回訪れています。また、家康の息子・信康も父とともに馬伏塚城に陣を置き、高天神城攻めにあたりました。馬伏塚城周辺には徳川軍が布陣し、諸井には家臣の酒井忠次も布陣していました。 1581年、高天神城を包囲して落城させた家康は、馬伏塚城で鷹狩(※)を行い、自分の領国となったことを示しました。 ※鷹狩…訓練した鷹を用いて獲物をとらえる狩猟。天皇・貴族・武士の間で行われた。儀礼的な側面も大きい。 家康×袋井 略年表 西暦 年齢 出来事 1542 1 三河の小大名・松平家に生まれる 1549〜1560 8〜19 駿府の今川家のもとで過ごす 1561 20 信長と同盟 1568 27 遠江進出 ・不入斗に布陣 ・馬伏塚城城主・小笠原氏、久野城城主・久野氏が家康配下に 1572 31 信玄が遠江へ進軍、三方ヶ原の戦い 1574〜1581 33〜40 高天神城攻防戦。馬伏塚城が拠点に 1589 48 七か条定書交付 1600 59 関ヶ原の戦いに勝利 1603 62 征夷大将軍に任官(江戸幕府を開く) 1604 63 原野谷川・太田川合流工事 大囲堤の工事が開始(完成は家康没後) 1616 75 駿府にて没 ※年齢は数え年 年貢の基準となる七か条定書  大大名となった家康は、1589年、領国内で検地を行い、年貢を徴収する単位として村ごとの範囲や年貢の採れ高を把握しました。  検地が終了した村には七か条定書を交付し、村が年貢を納める際の基準を定めました。ここでは年貢を徴収する領主に問題がある場合は、直接徳川家に訴えるように定め、武力ではなく裁判によって問題を解決する仕組みを整えました。 深見村と梅田村に宛てた定書は、現在、市指定文化財となっています。 家康の治水対策  関ケ原の戦いに勝利した後、征夷大将軍となり江戸幕府を開いた家康は、再び検地を実施するとともに、家臣の伊奈忠次に原野谷川と太田川の合流工事を行わせました。当時の原野谷川は現在よりも東に蛇行し、太田川も現在より西に流れており、度々洪水を起こしていました。 忠次は遠州灘に直接流れるように両河川を合流させました。また洪水や高潮に備えて浅羽地域を囲む堤防「大囲堤」を築き始めたといわれています。こうした治水事業は、現在の袋井市域の基盤につながっています。 神として語られる家康  家康は1616年に75歳でその生涯を閉じます。死後は久能山(静岡市)に葬られ、「東照大権現」という神としてまつられました。  家康にまつわる伝説は、市内にも数多く言い伝えられていますが、その多くは武田氏との戦いを題材としたものです。武田氏との苦しい戦いを経て、袋井に平和をもたらした家康は、今も人々に語り継がれています。 企画展 「袋井版 歴史上の家康と神として語られる家康」 開催中! 時 6月30日(金)まで(月曜日休館) 午前9時〜午後5時(入館…午後4時30分まで) 所 市郷土資料館・近藤記念館 ◆6月22日(木)午後1時30分〜2時30分に展示解説・ギャラリートークを行います。申込は不要です。直接会場へお越しください。