P02-09 私たち、袋井が好きです。〜袋井に住む外国人を知る〜  ブラジル出身のローザさん。本市に通算16年住んでいます。一度は家庭の都合で帰国したものの、袋井での暮らしが恋しくなり、2年前に再び本市に。2年間のブランクを取り戻すため、日本語の勉強に励みながら、家族4人で暮らしています。  本市の外国人人口は年々増加しており、今年8月1日時点で6,128人。総人口に占める割合は県内で4番目に多い、約7%です。一方、日本人人口は減少傾向。これからの社会を維持していくためには、日本人と外国人が手を取り合って地域づくりに取り組むことが不可欠です。  市では、日本人も外国人も暮らしやすい、多文化共生のまちづくりに向けた取り組みを進めています。多文化共生とは、「国籍や民族の異なる人々が、互いの文化的差異を認め合い、対等な関係を築こうとしながら、地域社会の構成員として共に生きていくこと(総務省)」です。  多文化共生のまちづくりに向けては、もちろん外国人が日本の文化やルールを知ることも重要です。しかし、日本人は、どれだけ外国の文化やルールを知っているのでしょうか。まずは、このまちに住む外国人について知ってみましょう。 問 多文化共生推進課多文化共生係 TEL44ー3138  企画政策課シティプロモーション室 TEL44ー3104 データで見る袋井市に住む外国人の状況 外国人人口は10年で約2倍に 本市の外国人人口 6,128人 市内の小学生の数(約5,000人)を上回っている。 「袋井市人口ビジョン2060」では、20年後、市民の10人に1人が外国人になると予測している。 外国人世帯が半数の自治会 どうやって運営してる? 堀越中自治会 永野 和利自治会長  堀越中自治会は、県営住宅堀越団地が対象区域の自治会です。この団地は、近辺に外国人を積極的に雇用している企業があることなどから、多くの外国人が住んでいます。約80世帯中、半数以上が外国人世帯です。  そのため、自治会も外国人の皆さんの力がないと運営できず、全6班のうち5つの班で外国人が班長を務めています。日本語を話せない方もいるので、通訳ができる住人に協力してもらっています。 39か国の人々が在住 国籍別外国人人口(令和7年4月1日時点) ◎1位 ブラジル 51.4% ◎2位 ベトナム 17.7% ◎3位 フィリピン 6.8% ◎4位 中国 4.9% ◎5位 インドネシア 4.8% ◎その他 14.5% 39か国(多くは、英語を母語としない国)の人が在住。 1〜5位の国籍が8割以上を占めている。 近年、ベトナム・インドネシアをはじめとした東南アジアの人が増加している。 就労資格の人が増加 在留資格別外国人人口(令和7年4月1日時点) ◎永住者 35.2% ◎定住者 24.5% ◎日本人・永住者の配偶者等 7.1% ◎技能実習 10.8% ◎技術・人文知識・国際業務 6.5% ◎特定技能 6.3% ◎その他 9.5% 日本にルーツを持つ方をはじめとした「身分資格」の人が7割。 近年は、就労などを目的に居住する「就労資格」の人が増加。背景には、少子高齢化に伴う人材不足を解消するため、国が新たな在留資格「特定技能」を設け、外国人材を受け入れていることなどが影響している。 袋井で活躍する外国人 スオンさん ユンさん(ヤマトエスロン株式会社 静岡工場(延久))  ヤマトエスロン株式会社では、「365日を支える。」を企業使命に、ハブラシや化粧品の容器などのプラスチック製品を製造しています。 ベトナム出身のスオンさん・ユンさんと、外国人従業員を支える竹林さんにインタビューをしました。 異国の地で産業を支える ― どんな仕事をしていますか? スオン 私は、技能実習生として製品の検査や梱包などをしています。 ユン 私は、ベトナムの大学で勉強した自動車工学の知識を生かして、機械メンテナンスをしています。 ― 仕事と日本語の勉強の両立は大変? スオン 仕事が終わってから自主勉強をしていますが、日本で生活する上で必要なことなので、全然大変じゃないです。毎日職場の皆さんと会話することも、日本語の勉強につながっています。 ユン 私も、職場での会話で日本語を覚えています。会社のクラブ活動にもたくさん参加し、いろいろな人と交流して、楽しみながら、日本語を覚えています。 ― 今後の目標は? スオン 「日本語能力試験」の「N1」(最高難度)に合格することです。職場の皆さんと、もっと上手な日本語で話せるようになりたいです。 ユン 僕も「N1」合格が目標です。また、『プラスチック成形技能検定2級』も受検します。日常会話では使わない専門用語ばかりで難しいですが、より広い分野で活躍できるよう、合格を目指して頑張ります。 ― 竹林さんは、2人の活躍をどう感じますか? 竹林 2人とも、前向きに仕事に取り組んでいます。あいさつも元気にしていて、まさに職場を活気づけてくれる存在ですね。従業員と積極的に会話したり、日本語能力試験にも挑戦したりと、向上心の高さも伝わります。 ― 今後の外国人材受入の展望は? 竹林 人材確保と開発途上国の母国産業を支える人材育成を兼ねて外国人材の採用を始めましたが、現場が活気づいたり、外国人ならではのアイデアが生み出されたりと、想定外の効果もありました。引き続き採用させていただき、社会貢献と事業安定につなげていきたいですね。 市内で働く外国人数 1,326人 (「令和6年度 袋井市内事業所における外国人材受入等状況調査」より(回答事業所数617件)) 私たちの身近にも、「このまちを共に支え合いたい」という気持ちで仕事や地域に向き合っている外国人がいます。 袋井市消防団の外国人団員数 1人 マツオさん(袋井市消防団浅羽方面隊第5分団(団員数11人))  本市の消防団は、少子化などを背景に団員数が減少しています。そのような中、今年4月、希望の光が差し込みました。浅羽方面隊第5分団に本市初の外国人団員・マツオさんが入団したのです。マツオさんと分団長の松下さんにインタビューをしました。 団員確保に悩む中現れた救世主 ― 入団のきっかけは? マツオ 松下分団長に声を掛けてもらったことです。元々祭典を通して交流があったので、安心して入団することができました。 ― 外国人団員は、できることが限られると聞きましたが…? マツオ 外国人団員は、出動時の緊急車両の運転や建物の中にいる人を救助するために窓ガラスを割ったり、団員以外に消火を手伝うよう指示をしたりすることなど(公権力の行使につながる行為)、確かにできないことはありますね。 でも、袋井市の場合はほとんどの活動は日本人団員とペアで行うという条件であればできます。もちろん、消火活動もです。いざという時に備えて、毎月の放水訓練にも真剣に取り組んでいます。 ― 外国人の皆さんにメッセージを マツオ 地域の活動に参加すると、近所の皆さんとのつながりができます。自分も、地域の祭典や草刈りに積極的に参加しています。言葉の壁もあるかもしれませんが、ぜひ外国人の皆さんも、自分から地域の活動に参加してみてください。優しく迎えてもらえますよ。 ― 松下さんは、外国人団員の受け入れに不安はありませんでしたか? 松下 特になかったですね。人が減っている中で当分団唯一の新入団員として入団してくれて、感謝しかないです。 ― マツオさんの活動の姿勢は? 松下 とにかく真面目です。分からないことはそのままにせず、しっかりと聞いてくれます。訓練や防火パトロールも毎回欠かさず参加してくれて、責任感の強さも感じます。 ― マツオさんに期待することは? 松下 バイリンガルなので、有事の際は通訳としても活躍してくれるのではないかと思います。  また、彼をきっかけに消防団に興味を持つ外国人が増え、各分団の団員確保につながるといいですね。 袋井で学ぶ外国人  市内に2校の日本語学校があることをご存知ですか? アジア諸国を中心とした、さまざまな国から来た皆さんが日本語を勉強しています。  袋井の地で夢に向かって勉学に励む皆さんが、日本語を習得する理由や袋井市の魅力、さらには市民の皆さんへメッセージを語ってくれました。 市内日本語学校生徒数 266人 学校法人 静岡国際言語学院 住所:諸井2331-1 生徒数:152人(8月1日時点) 生徒の国籍:ミャンマー・ネパール・スリランカ・インドネシア・ベトナム・バングラデシュ・中国・インド TLS袋井 住所:上山梨1579  生徒数:114人(8月1日時点) 生徒の国籍:ネパール・ミャンマー・スリランカ・ベトナム インタビュー内容 @日本語を勉強している理由  A袋井市の好きなところ   B市民へのメッセージ 学校法人 静岡国際言語学院 TLS袋井 スリランカ出身 カビンダさん @子どものころから日本の料理が好きで、日本に興味があったからです。スリランカには寿司やラーメンが食べられるお店があります。 A自然が多くてまちがきれいなところです。川があったり、山が見えたりするところがふるさとに似ています。 B電車で、自分の隣にだけ誰も座ってくれない時があり、少し寂しく感じました…。ぜひ、隣に座ってくれると嬉しいです! バングラデシュ出身 プジャさん @日本のアニメなどの文化が好きだからです。将来は、日本のホテルで働きたいです。 A海です。友達と自転車でよく行きます。バングラデシュのビーチは人が多いですが、袋井の海は広くて静かです。両方とも好きです。 Bバングラデシュの人は、フレンドリーで「外国人も一緒」という考えの人が多いです。日本人はシャイかもしれませんが、ぜひあいさつから始めてくれると嬉しいです。 ネパール出身 ニテスさん @日本の会社でリーダーになりたいからです。パソコンが好きなので、ITの会社に入りたいです。 A公園がたくさんあるところです。よく、学校の友達と愛野公園に行ってサッカーをしたり、袋井駅の近くの公園(田端東遊水地公園)でコーヒーを飲んだりします。 Bネパール人はお祭り好きな人がたくさんいます。私もお祭りが大好きです!袋井の祭りにもチャンスがあれば参加してみたいです。 ミャンマー出身 チャンさん @将来、日本で自動車を造る仕事をしたいからです。 Aまちの人が優しいところです。レストランでのアルバイト中、お客さんから「日本語頑張ってね」と言ってもらえたことがありました。とても嬉しかったです。 B外国人の中には日本のルールを守れない人もいます。でも、心が温かい人も多いです。私は日本に長く住み続けたいので、日本のルールを守っていきます。 INFORMATION 外国人との交流お役立ちコンテンツ 外国人市民のための生活ガイドブック  市では、転入手続き・税金・自治会など9テーマについてやさしい日本語で掲載したガイドブックを作成。市の転入窓口のほか、市多文化共生推進課や袋井国際交流協会などで配布しています。 「やさしい日本語」の手引き  県が作成した、相手に合わせて分かりやすく伝える「やさしい日本語」のポイントなどをまとめた手引き。外国人と会話する際の参考に。 多文化共生相談窓口  袋井国際交流協会では、日本人市民と外国人市民が共に安心して暮らせるよう、相談窓口を設けています。気軽にお立ち寄りください。 時 ホームページをご覧ください。 所 袋井国際交流協会 TEL43-8070 多言語翻訳アプリ「VoiceTra」  「VoiceTra」は、国立研究開発法人情報通信研究機構が開発中の、31言語に翻訳ができる無料のアプリです。話しかけたことを外国語に翻訳してくれます。  「やさしい日本語」で話しかけると、より正確に翻訳することができます。 私たち、袋井が好きです。 袋井で共生する私たち 日本人も外国人も暮らしやすいまちづくりのために、私たちができることは…? 日本人に親しみを感じている外国人市民 73.5% 外国人に親しみを感じている日本人市民 42.9% 難しい言葉は不要!まずはあいさつから 袋井市地域日本語教育コーディネーター 山 晃さん  日本語教室や企業で多くの外国人に日本語を教えるなど、普段から多くの外国人と関わる市内在住の袋井市地域日本語教育コーディネーター・山晃さんに、外国人と接するときのポイントを伺いました。 ■「あの外国人」から「○○さん」へ  私は通りがかりの外国人に積極的にあいさつをしていますが、あなたは、知らない外国人に「こんにちは」と声を掛けたら、どれくらいの人が返してくれると思いますか?実は、なんと9割の方は返してくれます。  日本語で会話ができなくても、あいさつならできるという人は多いです。まずは、コミュニケーションの基本であるあいさつをしてみましょう。  あいさつできる関係になったら、出身国や名前を聞けるといいですね。「あの外国人」という存在から「○○さん」という1人の人間として意識できるようになります。 ■「押し付け」と思われないために  ルールを守らない外国人には、日本のルールを理解してもらうことが必要ですが、「押しつけられている」と思われてしまうかもしれません。  そこで、伝える際は「あなたの国ではどうですか?」と聞いてみましょう。多くの外国人は、出身国の話を快く話してくれます。そうしたら話にぜひ耳を傾けてください。日本人側にも新たな気付きをもたらしてくれます。こういった一歩踏み込んだコミュニケーションで、お互いの距離がぐっと近づきますね。 ■ちょっとした会話が「居場所感」に  日本で生活する外国人は、異国の地でいわば「少数派」として生活しています。日本での暮らしに適応するために日本語や日本のルールを学ぶなど、懸命に頑張っている人が多いです。「多数派」である日本人とのちょっとした会話は、外国人の皆さんにとって「ここにいていいんだ」と安心できる「居場所感」につながります。  この「居場所感」を多くの外国人市民に感じてもらえたら、袋井市の多文化共生は「成功」へ大きく一歩近づくのではないでしょうか。  本特集で紹介した外国人の皆さんは、「日本語を上手に話せるようになりたい」「袋井の自然が好き」など、それぞれの形で日本人、そして袋井市への思いを持っていました。  令和4年度に市が実施した「多文化共生に関する日本人市民意識調査・外国人市民実態調査」では、外国人市民の73・5%が、日本人に親しみを感じていることがわかっています。  一方、外国人に親しみを感じている日本人市民は42・9%。約30ポイントのギャップがあることがわかり、双方の意識の差が浮き彫りとなりました。  言葉も文化も異なる外国人に、いきなり親しみを感じるのは難しいことです。しかし、「ごみ出しの際に会った近所の外国人にあいさつをしてみる」、また「コンビニでレジ対応をしてくれた外国人の店員さんに『ありがとう』と声を掛けてみる」など、少しだけ相手に配慮した、やさしい気持ちで接することができれば、目の前の外国人も自分も笑顔になれるかもしれません。 そうすれば、自然と親しみが湧き出て、相手を「知ってみる」きっかけになるでしょう。  外国人だけでなく、私たちは一人一人、生まれ育った環境も考え方も違う、「異文化」を持つ存在です。  まずは相手を知り、互いの違いを認め合い、尊重することが、誰もがいきいきと暮らせる「多文化共生社会の実現」につながります。 最後に…  市では、「世界!!びっくり・ふしぎ・ほっこりエピソード」と題して、日本人と外国人が日常生活で相互に「びっくり」「ふしぎ」「ほっこり」した話を募集しました。来年1月に開催予定のエピソードの展示会に先立ち、心温まるエピソードの一部をご紹介します。 子どもが年中の頃まで同じ園にいたブラジル国籍の子が、年長で転園。ママ同士はあいさつのみの交流だったが、久しぶりにスーパーで再会したら、なんだか嬉しくてママ同士でハグ。それから会うたびに、お店の中でハグをしてます。 息子が中学生の頃、駅の階段を降りる時、外国の方とぶつかって転倒。息子は「Sorry」と、相手は「ごめんなさい」と、互いに気遣い、相手の国の言葉を使って気持ちを伝えていました。