P22 輝くふくろいの人 とにかくおいしいものを出したい! 現状に満足しない「いいかげん大将」 「味匠 弐」オーナー兼 すし職人(愛野) 鈴木啓介さん 「ほぼ独学でここまで来れたのは、『おいしいものを作りたい』、『お客さんに喜んでもらいたい』という強い気持ちがあったからだと思います」  そう話すのは、鈴木啓介さん・46歳。昨年10月に全国すし商生活衛生同業組合連合会が開催した東海・北陸7県のすし職人が集う「第15回全国すし連中部ブロックすし技術コンクール(以下、本コンクール)」の「関西江戸盛披露の部」で金賞(1位)を、「巻きずし披露の部」で銀賞を受賞しました。 すし修行歴0。手本は父のレシピ  すし職人である父の背中を物心がつく前から見ていた鈴木さんは、自然と父と同じ道へ進んでいきました。  しかし、その道は決して平たんなものではありませんでした。 「18歳の時から、日本料理の世界で板前として和食を学んでいたものの、すしの修業はしておらず、ほぼ独学でした。まずは父のレシピ通りに作ることから始めましたが、当然同じ味にはならず、父の味に近付けるため作ってはやり直す、を繰り返しました」  また、周りの料理人の技術を見て研究を重ね、徐々に腕前を上げていったといいます。 自分の経営する店が選ばれるために  そして41歳の時、ついに自分で店を経営することになりました。 「料理は誰でもできます。『選ばれる店』になるためには、そこにどれだけ付加価値をつけられるかが重要です。私は、素材の吟味はもちろん、米や調味料を自分でブレンドするなど、最適なものを提供できるよう研究してきました。ここまでこだわって初めて、お金をいただけるのだと思っています」  その底知れぬ探求心で、鈴木さんの料理は次々とお客さんを魅了していきました。 練習は日々の営業から  技術の向上を目指し、鈴木さんは43歳の時、「静岡県鮨商生活衛生同業組合」に入会。組合の講習会に参加する中で本コンクールの存在を知り、出場を決めました。しかし、営業時間外の練習だけでは限界があります。そこで、鈴木さんは日々の営業の中でコンクールを想定した盛り付けの料理を提供してきました。 「限られた時間の中でいかに繊細な部分まで気を遣えるかが勝利の鍵。営業中に実践することで、お客さんにより質の高いものを提供でき、喜んでいただけました」  次は、本コンクール全国大会の全3部門で金賞を獲得することを目標としています。 全てはお客さんに喜んでもらうため  料理に対してはストイックな信念を持ちながらも、自らを「いいかげん大将(良い加減大将)」と自称するユーモアな一面もある鈴木さんには、多くのファンがいます。取材時にも、帰り際に『おいしかったよ!』と鈴木さんに声をかけているお客さんの姿が多く見られました。 「お客さんのありがたい声を聞くと、『もっとおいしいものを出して喜ばせたい』という気持ちが強くなり、もっと頑張ろうと思うんです」 「味匠 弐」は、鈴木さんが高校生の時から温めてきた店名。「何事も1番になりたい。でも1番になっても天狗にならず、常により良いものを追い求めたい」という思いが込められています。お客さんのほころぶ顔を思い浮かべながら、今日も鈴木さんは料理の腕に磨きをかけています。